クランチにドローインを統合する方法
クランチにドローイン(腹横筋の引き込み)を統合する方法を、実践でそのまま使えるレベルで詳しくまとめます。目的は「腹横筋(深層コア)を活性化して腹圧を作り、表層の腹直筋クランチ動作と連動させる」ことで、腰の保護・姿勢制御・腹部分離(例:Diastasis recti)対策にも有効です。以下は分かりやすく段階化した手順、呼吸のタイミング、指導用キュー、ドリル(導入〜発展)、頻度・回数、チェック方法、よくあるミスと修正、注意点です。
要点
- ドローイン=おへそを背骨へ「軽く引き込む」感覚(腹横筋の短縮)。
- クランチでは「先にドローインで腹圧の土台を作り、そのテンションを保ったまま上体を丸める(腹直筋収縮)」が基本。
- 息を完全に止めない。軽い引き込み+浅い呼吸(または短いブレイシング)は安全性と出力の両立に役立つ。
1) 準備:体位・手・顎・骨盤のセットアップ
- 仰向けに寝て膝を立て(膝90°程度またはやや広め)、足は床にフラット。
- 骨盤はニュートラル〜軽い後傾(腰の隙間に手が軽く入る状態)。腰が反っている人はタオルを腰に入れてニュートラル確認。
- 両手は胸の横(鎖骨付近)か頭の後ろ(軽く支える。首を引かない)。もし首に引っ張りが出るなら腕は胸にクロス。あごは軽く引いて顎と胸の間に拳1個分の距離を保つ(チンタック)。
- 目線は天井。肩甲骨は軽く床から離れる(従来のクランチ範囲:肩甲骨が床から3–8cm上がる程度)。
2) 呼吸 & ドローインのタイミング(1レップ)
- 準備吸気:鼻でゆっくり軽く吸う(胸ではなく腹に入れるイメージは不要 — 深すぎない)。
- ドローイン(軽く吐きながら):口から軽く吐きながらおへそを背骨へ「短く」引き込む(腹横筋の短縮)。このとき腹に少量の張り(腹圧)が作られるのを感じる。息を完全に吐き切らない。
- コンセントリック(上体を起こす):ドローインのテンションを維持したまま、腹直筋で胸を骨盤に近づけるように上体を丸める(肩甲骨を床から数センチ上げる)。呼気を軽く続けながら行い、息を長時間止めない。
- トップで短く保持(0.5–1秒):ドローインを崩さず、肩甲骨が床から離れている間も腹横のテンションは維持する。
- エキセントリック(戻し):腰を反らさないようにコントロールしてゆっくり戻す。戻しながら鼻で吸って次レップの準備(ドローインを再形成)。
要点:ドローインは「動作前に作る」→「動作中に維持」→「戻しで緩めない」。深呼吸のみに頼らず腹横の収縮感を優先。
3) キュー
- 「おへそを背骨に“ぎゅっ”と寄せてから丸めて」
- 「首を引かないで、肩甲骨だけ持ち上げる」
- 「上げるときに腹のテンションを緩めない」
- 「戻すときもお腹を保持して床に優しく下す」
4) ドリル — 初心者→中級→上級(段階的)
A. 導入(ドローイン習得)
- 仰向けで膝立て、手を下腹に置く。ゆっくり鼻吸→口吐きでドローイン(おへそを背骨へ)5–10秒キープ×5回。目的:腹横筋の感覚を掴む。
B. ドローイン + ミニクランチ(低負荷)
- ドローインを作ってから肩甲骨だけを床から上げる(3–5cm)。8–12回×2–3セット。呼吸は軽く吐きながら上げ、吸いながら戻す。
C. スタンダード・ドローインクランチ
- 通常のクランチ上記の呼吸で。テンポ 1:0:2(上げ1秒、トップ0–1秒、下げ2秒)。8–15回×3セット。
D. 進化:ドローイン + アイソメトリックホールド
- 上げてトップで3–5秒ホールド(ドローイン維持)、戻す。6–10回×3セット。
E. 発展(負荷追加)
- ダンベルを胸に抱えて行う、あるいはケーブルクランチ(ロープを顔横で)で負荷増。フォームが保てる重さ限定。6–12回×3セット。
F. コア統合(機能的)
- ドローインをしたままバランスボール上でクランチ、またはクランチ→プランクへ移行してドローインを動的に保持する練習。
5) テンポとセット・回数(目的別)
- 筋肥大:8–15回 × 3–4セット、テンポ 1:0–1:2(上げ:ホールド:下げ)
- 筋持久/体幹耐久:15–30回 × 2–4セット、テンポ 1:0:2(休まず)
- リハビリ/腹横強化:10–15回 × 2–3セット、各レップでドローイン5秒維持を入れる
- 初心者:8–10回 × 2セット(ドローイン習得がメイン)
6) チェック方法
- 触診:下腹(おへその両脇)に指を置き、ドローインで腹壁が硬くなるか確認。
- 鏡/動画:首で引っ張っていないか、肩甲骨が意図した高さで上がっているか、腰椎が反っていないかを横から確認。
- 呼吸テスト:ドローインしたまま軽く声を出せるか(声が出る=息を止めていない)。
- 筋活動感:動作中に首や胸の前側(胸鎖乳突筋)に力が入りすぎていないか。入っているならフォームが誤っている。
7) よくあるミスと対処法
- ミス:首を引っ張って上げる → 修正:顎を引き、両手は頭を支えるだけ。胸を肋骨ごと丸めるイメージ。
- ミス:息を止めたまま力任せに上げる → 修正:ドローイン+浅い呼吸。高血圧や心疾患の人は息止めを避ける。
- ミス:腹を引き込みすぎ(ぺたんこに)で腹直筋に力が入らない → 修正:軽い引き込み+腹部の張り(少し空気を残す)でバランス。
- ミス:腰を反らす/反動で起き上がる → 修正:可動域を小さくしてフォームを整える(肩甲骨だけ上げる)。
- ミス:ドローインを忘れる(動作中に緩む) → 修正:各レップ前に「準備ドローイン」を声で掛ける(例:「引く」→「上げる」)。
8) 特殊ケース・注意
- Diastasis recti(腹直筋離開):クランチは症状を悪化させることがある。ドローインで腹横を優先し、腹直を過度に張らない(テスト:腹部に隆起が出るなら中止して理学療法士へ相談)。
- 腹部ヘルニア・術後:医師の許可が必要。
- 妊娠中:第2–3期は仰向けでのクランチは避ける(大動脈圧迫等)。医師指示に従う。
- 心疾患・高血圧:強いブレイシング(長い息止め)は避ける。短時間のドローインは問題ないが不安なら医師相談。
9) 代替・関連エクササイズ(ドローインを応用)
- デッドバグ(ドローインで行う):腹横の動的制御を養う(リハビリで多用)。
- ホロウホールド / ホロウロール:腹横+腹直の協働制御に優れる(初心者は短時間→漸増)。
- プランク(ドローイン維持):等尺性で腹横の耐久性を上げる。
- ケーブル/ロープクランチ:負荷管理しやすく発展に最適。
10) 実践例(そのまま使えるワークアウト)
- ウォームアップ:ドローイン習得(仰向けドローイン 1–2分)
- メイン:ドローインクランチ 3セット × 12回(テンポ 1:0:2、トップで0.5秒保持)
- 補助:デッドバグ(ドローインを維持して)3セット × 8–10/側
- クールダウン:深呼吸+軽い腹部ストレッチ
11) チェックリスト
- 仰向けで膝を立て、骨盤はニュートラル。
- 準備吸気→吐きながらドローイン(おへそを背骨へ)。
- ドローインを維持して肩甲骨だけ上げる(首を使わない)。
- トップで短く保持→戻しながら吸って次へ。
- 痛みや腹部の不自然な隆起があれば中止→専門家へ。



