ベンチプレスにドローインを組み込む方法

ベンチプレスにドローイン(腹横筋の引き込み)を組み込む方法を、セットアップ〜呼吸〜ドリル〜注意点まで実践レベルで詳しくまとめます。目的は「肩と胸に力を効率よく伝えつつ、胸郭と脊柱を安定させてケガを減らす」こと。スクワット・デッドとはタイミングやニュアンスが違うので、ベンチ特有のポイントを中心にします。

基本の考え

  • ドローイン:おへそを背骨方向へ引き、腹横筋を短縮させることで腹圧を作るテクニック。
  • ブレイシング(腹圧で「固める」)と併用するのが理想:ドローインでコアを“締め”、ブレイシングで力を伝える土台を作る。ベンチでは胸郭の安定(肋骨の位置)と肩甲帯の固定が重要。

1) ベンチ1レップの呼吸とドローインのタイミング

  1. セットアップ(ベンチに寝る前/乗った瞬間)
    • 足を地面に固定し、肩甲骨を寄せ背中に少しアーチを作る(ただし過度な反りは避ける)。胸を軽く張る。
    • バーを見てグリップ幅を決める。
  2. ドローイン作成(グリップ→外す前)
    • 鼻で軽く吸い、口で少し息を吐きながらおへそを背骨に“短く引き込む”イメージでドローイン。手のひらを下腹に置いて感覚を確かめるとよい。
    • ドローインをしたら、腹に少量の空気を入れて腹部の張り(腹圧)を作る。これでコアが安定する。
  3. バーを外す/ラックアウト前
    • ドローイン+腹圧を維持しつつ、肩甲骨を寄せたままバーをラックアウトする。足でしっかり踏み込む(フットドライブ)感覚を作る。
  4. 降ろす(デセント)
    • ドローインのテンションを保ち、肘と肩をコントロールして胸の位置へ下ろす。肋骨が過度に突き出ないよう肋骨を少し「下げる」イメージ(胸は張るが肋骨は落とす)。
  5. 押し上げ(アセント)
    • ドローイン(+ブレイシング)を維持したまま足で床を押し、胸から腕を伸ばして押し切る。ロックアウト後に短く呼吸を整える(リラックスしすぎない)。

重要:軽〜中負荷では「ドローインを維持 → 浅い呼吸で動作」を基本に。高重量では「ドローインで準備→短い強いブレイシング(息を一瞬止め腹圧を最大化)→上げ切ったら呼吸を戻す」ことが多いです。

2) なぜベンチにドローインが有用か

  • 肋骨の位置を安定させる→バーの経路が直線に近づく(効率アップ)
  • 胸郭の動揺が減る→肩関節にかかるストレス低下
  • 足→腰→胸→腕への力伝達が途切れにくくなる→最大出力が出やすい
  • ブリッジの安定と腹圧の両立で怪我予防に貢献

3) 実用ドリル(習得→応用)

A. 床でのドローイン習得(3–5分)

  • 仰向けで膝曲げ、手を下腹に当ててドローイン(5–10秒キープ)×5回。

B. ベンチでの「吸って引き込む」ドリル(軽め)

  • 空バー(または軽重量)でラックアウト→ドローインして降ろす→押す。フォーム確認。5×5。

C. 「ラックでのホールド」ドリル(安定感を確認)

  • ラックアウトして胸上で1–2秒ホールド(ドローイン維持)→下ろす。10回×2セット。

D. フットドライブ + ドローインチューニング

  • 軽重量で足の踏み込みを意識し、ドローインをキープしながらフットドライブで押す。これで下半身から上半身へ力を伝える感覚を養う。

E. ダンベルベンチへの応用

  • ダンベルは不安定なので、ドローインと肩甲骨固定をより意識して行う。各腕の独立性をチェックできる。

4) キュー

  • 「おへそを背骨に寄せてからラックアウト」
  • 「肋骨を少し下げて胸は張る」
  • 「腹を軽く張って足で床を押す」
  • 「降ろしてもお腹のテンションを緩めない」

5) チェック方法

  • 触診:指を下腹と横腹に置き、ドローイン時に硬さが出るか。
  • 動画:横から見て胸のアーチ(過度でないか)、バーの経路が胸の中心に向かって垂直かを確認。
  • 声チェック:ドローインしたまま短く声を出せるか(声が出る=完全に息止めていない)。
  • 左右差:ダンベルで左右差が出ないか確認(出るなら筋力バランス調整)。

6) よくあるミスとその修正

  • ミス:ドローインしすぎて胸郭が潰れる(力が逃げる) → 修正:胸は「張る」、肋骨は「下げる」イメージに分けて説明。胸郭全体を潰さないこと。
  • ミス:息を長時間止めすぎ(持続的なバルサルバ) → 修正:高負荷時の短いブレイシングはOKだが、慢性的に止めない。持病がある人は医師相談。
  • ミス:肩甲骨を寄せずに押して肩に頼る → 修正:セットアップで肩甲骨を寄せるドリル(リトラクション)を追加。
  • ミス:足が浮く・フットドライブができていない → 修正:足位置を調整し、踏み込みのドリル(フットドライブ練習)を行う。

7) プログラミング例

  • 週2回ベンチ:
    • テクニック日(軽〜中負荷):5セット×5(ドローイン徹底、フォーム優先)
    • 強度日(中〜重):4–6セット×1–3(ドローイン→必要に応じ短いブレイシング、セット間に呼吸を整える)
  • 補助:プル系と肩周りの安定運動、プランクやパルスで腹横筋強化。

8) 進化系・応用

  • テンポ法:2秒で降ろし、1秒ポーズ、爆発的に押す(ポーズ中ドローイン維持)。
  • スピードワーク:軽め重量で素早く押す(ドローイン+即ブレイシングで出力向上)。
  • スパットテクニック:高重量で短時間のブレイシングを用い、複数呼吸セットを避ける(ただし医療リスクある人は注意)。
  • 片手ダンベルや不安定面:安定性の強化でドローインの効率を高める。

9) 安全上の注意

  • 腹部ヘルニア、未治療の高血圧、心疾患がある方は医師に相談のこと。短時間のブレイシングは一般的に使われますがリスクがあります。
  • 妊娠中は腹圧・ポジションが変わるため主治医指示に従ってください。
  • ドローインだけでなく、肩甲骨や胸郭のセットアップも同等に重要。重量を増やすときはフォーム最優先。

10) すぐ使える短いチェックリスト

  1. ベンチに寝たら肩甲骨を寄せる。
  2. 足で床を固定。
  3. 鼻で軽く吸い、口で軽く吐きながらおへそを背骨へ引く(ドローイン)。
  4. 腹部に少量空気を入れて腹圧を作る。
  5. バーをラックアウト→降ろす→押す(ドローイン維持)。
  6. ロックアウト後呼吸を整える。