ラットプルダウンにドローインを組み込む方法

ラットプルダウンにドローイン(腹横筋の引き込み)を組み込む方法を、セットアップ→呼吸→タイミング→練習ドリル→チェック方法→よくあるミスと修正→応用まで、トレーニング中にそのまま使えるレベルで詳しくまとめます。目的は「胸郭と腰椎を安定させ、肩甲帯からの力伝達をスムーズにする」ことです。

要点

ドローインは「おへそを背骨へ引く」感覚で腹横筋を短縮して腹圧を作るテクニック。ラットプルダウンでは、上体のブレを抑えつつ肩甲帯(下制+内転)を正しく使うために、セットアップで明確にドローインを作り、引く・戻すの両局面でテンションを維持するのが基本です。

1)ラットプルダウン1レップの流れ(推奨順)

  1. 座位セットアップ
    • 膝パッドをしっかり固定し、足は床(若干前方)に置く。背中は軽く胸を張る(過度に反らない)。握り幅は目的により調整(ワイド=広背筋メイン、ナロー=中背部寄り)。
  2. ドローインで準備
    • 鼻で軽く吸い、口で少し吐きながらおへそを背骨へ引く(短く5秒ほど感覚を作る)。手のひらを下腹に当てると分かりやすい。
    • ドローイン作成後、腹に少量空気を入れて「腹部の張り(腹圧)」を作る。これで上体が安定する。
  3. 開始姿勢(腕伸ばし)
    • 肘を伸ばしてバーを保持。肩はリラックスしつつ肩甲骨は少し下げておく(肩が耳に近づかない)。ドローインを維持。
  4. 引く(収縮=コンセントリック)
    • 肘を下後方へ引き、肩甲骨を下制(下げ)しつつ内転(寄せる)するイメージでバーを胸上方または鎖骨下あたりへ引く。
    • ドローインのテンションは常に維持。力は肩甲骨から出し、上体の反動や体幹の揺れを最小化する。呼吸は短めに吐きながら引く(=息を完全に止めない)。
  5. 戻す(伸張=エキセントリック)
    • コントロールして肘を伸ばし、肩甲骨をリリースしてスタート位置へ。ここでもドローインは緩めず、上体が前後に揺れないようにする。吸気はこの戻しの途中か終わりで行う。
  6. リラックス/次レップへ
    • 必要なら数秒で呼吸と腹圧を整えて次のレップ。

2)ドローインの強さと呼吸戦略

  • 軽〜中負荷:やや強めのドローインを作って持続。浅い呼吸で動作を維持。
  • 高負荷(重め):セットアップでしっかりドローイン→引く直前に短いブレイシング(息を少し止める)→引き切ったら素早く呼吸を戻す。高血圧・心疾患の方は息止めに注意。
  • 目安:お腹を「ぺったんこ」にしすぎると肩甲帯の動きが硬くなりすぎる場合がある。引き込み+腹部の張り(空気)でバランスを取る。

3)実践ドリル(初心者→応用)

A. 床でのドローイン習得(3–5分)

  • 仰向けで膝立て、手を下腹に置きドローイン5–10秒×5回。

B. 四つん這いでのドローワーク

  • 四つん這い→ドローイン→片手で軽いロウ(ゴムバンド)を引く動作。体幹の固定感をチェック。10回×2セット。

C. シーテッドロウ(バンド)での意識移行

  • 軽めのバンドで座り、ドローインを作ってから肘を引く。胸を張りすぎず肋骨を落とす感覚を保つ。12回×3セット。

D. ラットプルダウンでの段階的導入

  1. 空バー(または軽負荷)でフォームを確認(ドローイン維持)8–12回×2セット。
  2. 中負荷でテンポを意識(2秒引く・2秒戻す)8–10回×3セット。
  3. 高負荷はフォームが崩れない範囲で3–5レップのセット。

4)チェック方法

  • 触診:下腹(おへそ横)に手を置いて、ドローインで硬さが出るか確認。
  • 動画:横から見て、引くときに上体が過度に反動で動いていないか。首や胸が前に出ていないか確認。
  • バー経路:バーが胸にまっすぐ近づくか、バーが脇に逃げていないか。
  • 肩甲骨の動き:肩が耳に向かって上がらず、肘主導で下げられているか(下制の確認)。

5)よくあるミスと修正

  • ミス:体を後ろに反動させて引く(レバー化) → 修正:膝パッドと体幹で固定、ドローインで安定させて肘で引く感覚を教える。
  • ミス:胸を突き出しすぎて肋骨が上がる → 修正:肋骨を少し下げるイメージでドローイン。胸は張るが肋骨は突き出さない。
  • ミス:肩が耳に上がる(肩甲挙上) → 修正:引き始めは肩を下げてから肘を引く(「肩を下ろしてから寄せる」)。
  • ミス:呼吸を止めすぎる → 修正:浅い呼吸を練習し、重負荷時のみ短いブレイシングを使う。
  • ミス:ドローインを忘れて腕だけで引く → 修正:各セット前にドローインを必ず作るルーティン化(セット前1–2回の確認呼吸)。

6)プログラミングの提案(目的別)

  • 筋肥大(背中の厚み):中負荷 8–12回×3–4セット(テンポ2:1:2、ドローインを常に維持)
  • 筋力/高強度:重負荷 3–6回×4–6セット(ドローイン→必要に応じ短めブレイシング)
  • リハビリ/フォーム習得:軽負荷 12–15回×3セット(ゆっくりコントロール、ドローイン重視)

7)応用・発展

  • 片手ラットプル(ワンアーム):不均衡を察知しやすく、ドローインと肩甲帯の片側制御を強化。
  • テンポ変化(ポーズ法):引き切ったところで1秒ポーズを入れ、肩甲骨を完全に下げる感覚を養う。
  • 不安定環境での保持:片足で軽く体幹を試すドリルで、ドローインの耐久性を高める。

8)安全上の注意(必読)

  • 腹部ヘルニア、未治療の高血圧、心疾患、妊娠中の方はドローインや長時間の息止め(バルサルバ)を使う前に医師に相談してください。
  • 重量はフォーム(ドローイン維持)を崩さない範囲で増やすこと。揺れや反動で腰を痛めないよう注意。

9)短い指導キュー

  • 「おへそを背骨へ“引いて”から引く」
  • 「肩を下げて、肘で引く」
  • 「戻すときもお腹を緩めない」
  • 「肋骨を突き出さない(胸は張るが肋骨は落とす)」