過剰性欲障害の患者数

正確に「日本国内で過剰性欲障害(または同等の状態)の患者数・割合」を断定するのは難しく、「推定値」しか示せないのが現状です。そのうえで、議論・研究のあるデータを元に「どのくらいの規模か」の見込みを解説します。


世界での推定 ― Compulsive Sexual Behavior Disorder (CSBD) の有病率

  • 最近の多国間調査では、成人一般集団で「CSBD(コントロール不能な性的衝動・行動)」のリスクがあるとみられる人の割合は 約 4.8〜5% と報告されています。(PsyPost – Psychology News)
  • また別の研究では、あるコミュニティサンプル(オンライン調査参加者含む)での「推定CSBD」が 約10.8% という報告もあります。(PubMed)
  • ただし、研究により「CSBDの定義」「評価方法」「サンプル構成」が異なるため、この「5%前後」「10%弱」といった数字はあくまで「大ざっぱな目安」となります。

仮に世界人口(成人/全人口)を基に単純計算すると、現在の世界人口約80億人のうち成人割合や性比などを無視しても、5%とすれば 約4億人近く が「CSBD のリスクあり」となる可能性があります。ただし、この数字はあくまで理論上の単純試算です。


日本国内での推定

  • 世界42か国を対象とした上記の国際調査では、日本のサンプルにおけるCSBDリスクの割合は 約 0.68% と報告されています。(PMC)
  • ただし、この数字は「オンライン調査への回答者」「サンプル数が限られる」「回答バイアスあり」という限界があります。

日本の総人口(2025年時点で約1.24億人)を単純にあてはめると、0.68%では 約84万人 相当となります。ただし、これはあくまで「サンプルを母集団に単純拡大した場合の理論値」であり、実際の「診断された人」「困っている人」の数とは乖離があります。また、「調査でCSBDリスクあり」とされた人すべてが医療機関を受診するわけではなく、恥ずかしさや偏見などから受診していない人も多いため、実質的な“患者数”はこの数の数分の1〜数倍という可能性もあります。


有病率を見積もる上での限界と注意点

  • 定義のブレ:過去は「性依存」「過剰性欲」「性嗜好異常」など異なる言葉が使われ、何をもって「異常」とみなすか国や研究によって異なる。
  • 調査方法の問題:オンラインアンケート、自己申告、無作為サンプリングでないなど、バイアスが入りやすい。
  • 診断基準の変化:2022年ごろから、国際疾病分類 World Health Organization (WHO) の最新版で「CSBD」が正式疾患として定義された。(AFPBB News)
  • 受診率の低さ:たとえ「CSBDリスクあり」であっても、多くの人が治療を受けていない。ある報告では、「高リスク者のうち、治療を受けたのは14%」との指摘もあります。(PsyPost – Psychology News)

推定

  • 世界全体では、「CSBDのリスクを持つ人」は 数億人規模
  • 日本では、数十万〜数百万規模の可能性がある。ただし正確な統計や疫学研究は限られており、実数はもっと多いか、逆に少ないかも不明。
  • ただし「調査でリスクあり」の人=「治療を必要としている人」ではないため、「医療が必要な患者数」はこの範囲よりもかなり絞られると推察される。

なぜ「正確な人数」が出せないのか

  • CSBD/過剰性欲障害は、恥・偏見のため受診しにくく、データが集まりにくい。
  • 「性欲が強い」「多い性行動」が必ずしも障害とは限らず、社会文化・本人の価値観で大きく左右される。
  • 評価方法や診断基準がまだ確立途上で、研究ごとに結果が大きく異なる。

結論

現時点で使える最良のデータによれば、「CSBD/過剰性欲障害を含む性衝動制御障害の潜在的リスクを持つ人」は、世界でも日本でも“決して少数派ではない”と考えられます。ただし「リスクあり」≠「治療必要・患者」とは限らず、正確な患者数・有病率を示す信頼できる統計はまだ存在しない、というのが実情です。