胸式呼吸とは
胸式呼吸(きょうしきこきゅう)について、腹式呼吸との違いがハッキリわかるように、生理学・動作の視点から整理して解説します。
■ 胸式呼吸とは?
胸式呼吸とは、胸郭(胸の骨格:肋骨・胸骨)が広がることで肺を膨らませて行う呼吸法です。胸周囲の筋肉や肩~首に近い呼吸補助筋を主に使います。
特徴的なのは、
- 吸うと胸が膨らむ
- 吐くと胸がしぼむ
- 肩や胸周りが動きやすい
という点です。
■ どの筋肉を使うのか?
胸式呼吸は、横隔膜の動きが小さく、代わりに肋間筋・胸鎖乳突筋・斜角筋などの筋肉が関与します。
主な呼吸筋
● 横隔膜(少し)
→腹式よりは動かない
● 肋間筋
肋骨の間にある筋肉
肋骨を持ち上げて胸を広げます。
● 呼吸補助筋
胸式呼吸が強くなるほど、肩や首の筋肉まで動員されます。
- 前・中・後斜角筋
- 胸鎖乳突筋
- 小胸筋
そのため、胸式呼吸が続くと肩こり・首の張りが強くなることがあります。
■ 胸式呼吸のメカニズム
◆ 吸うとき
肋骨を引き上げ、胸郭を左右&前後方向に広げる
→ 肺が膨み、空気が入る
→ 胸が膨らむ
◆ 吐くとき
胸郭が戻る
→ 肺が縮む
→ 空気が出る
→ 胸がしぼむ
お腹はほとんど動きません。
動いてもそれは「腹式が混ざっている状態」です。
■ 胸式呼吸の状態で起きること
胸式呼吸は交感神経が優位(緊張モード)になりやすい「浅い呼吸」です。
呼吸が浅くなる理由
胸式呼吸は肺の上部を中心に使うため、肺の下部が十分に広がりません。
結果的に、酸素摂取量が少なくなりがちです。
そのため、
- 呼吸回数が増える(速くなる)
- 心拍数が上がる
- 身体が「戦闘・逃避モード」になる
これはストレスに対応する自然な生理反応でもあります。
■ 胸式呼吸のメリット
胸式呼吸が悪いわけではありません。
状況によってはプラスの作用があります。
スポーツ・高強度運動で有利
全身に酸素が必要な時は、
胸郭+横隔膜=両方使った大きな呼吸が必要です。
肺を最大限使うため、胸式は素早く酸素を取り込む役割を担います。
緊急時の反応が早い
瞬発力・集中力を高めるための「交感神経ON」には胸式呼吸が向いています。
例:
- 勝負前
- スポーツのスタート
- 緊張感が必要な場面
声や表現に使う場面
演劇や演説で胸郭が動くと、胸の共鳴が得やすくなるため表現力が増すことがあります。
■ 胸式呼吸のデメリット(慢性的になると)
普段から胸式呼吸が「習慣化」している場合は、デメリットの方が大きいです(→特に現代人の特徴)。
呼吸が浅く・早くなる
→ 緊張が抜けない
→ ストレスが溜まりやすい
→ 睡眠の質低下
肩・首の筋緊張
→ 肩こり・頭痛
→ 首・背中の張り
自律神経が乱れる
→ 落ち着かない
→ 不安感
→ 過呼吸傾向
内臓が動かない
→ 消化不良
→ 便通悪化
→ 内臓の血流低下
姿勢が悪くなる
呼吸が浅くなると、頭が前に落ち、猫背が助長されます。
■ 胸式呼吸が習慣化しやすい理由
現代人は、
- 座り時間が長い
- スマホ首
- 姿勢が崩れる
ことで、横隔膜がうまく使えない姿勢になっています。
その結果、
肺を動かすために「胸だけで呼吸する」クセがつきます。
特に
- ストレス状態
- 緊張場面
- デスクワーク
では胸式に偏りやすいです。
■ 胸式呼吸と腹式呼吸の違い
| 項目 | 胸式呼吸 | 腹式呼吸 |
|---|---|---|
| 主な筋肉 | 肋間筋・胸鎖乳突筋 | 横隔膜・腹横筋 |
| 姿勢 | 猫背・首前傾に多い | 背骨が安定 |
| 呼吸の深さ | 浅い | 深い |
| 酸素供給 | 少ない | 多い |
| 自律神経 | 交感神経ON | 副交感神経ON |
| 気持ち | 緊張・不安 | リラックス |
| 肩首負担 | 大きい | 小さい |
| 内臓刺激 | ほぼなし | あり |
■ 「胸式=悪い」ではない
大切なのは、身体が状況に応じて使い分けられること。
● 理想
- 普段:腹式呼吸(横隔膜)
→ 深い呼吸、リラックス、内臓ケア - 運動中:胸式+腹式のミックス
→ 酸素を多く取り込む - 緊張場面:胸式呼吸
→ 交感神経ON、集中力↑
呼吸は「固定」ではなく、スイッチできる能力が重要です。
■ 胸式呼吸を「整える」練習もある
胸式が悪いのではなく、胸式を正しく使えるようにする訓練もあります。
例えば:
- スポーツ呼吸法(プール・ランニング)
- 声楽の呼吸
- ヨガの胸郭拡張エクササイズ
- 身体表現の呼吸(ダンサー)
胸式を「意識的に深く」使える人は、肺活量が増え、身体パフォーマンスが上がります。
■ 胸式呼吸から腹式に切り替える方法(実践)
胸式が癖になっている人は、いきなり腹式は難しく感じます。
まずは胸式呼吸を「落ち着かせる」ことから始めます。
◆ ステップ1:肩を脱力
肩の力が入っていると胸式が強くなる
→ ゆっくり肩を回し、ストンと落とす
◆ ステップ2:鼻呼吸でゆっくり吸う
胸が少し広がる程度でOK
◆ ステップ3:吐く息を長く
「フー」と細く長く
→ 吐き切ることが重要
吐く息を長く→副交感神経
↓
胸式が自然に弱まり、腹式が入りやすくなる
■ 胸式呼吸が有効なシーンまとめ
✓ 試合・プレゼン前:集中力と交感神経ON
✓ 瞬発力が必要な動き:酸素供給の即効性
✓ 歌や演技:胸の共鳴
✓ 追い込む運動:最大換気量を高める
✓ ランニング中盤~後半:胸郭で呼吸量を増やす
→ 「武器」として使うイメージです。
■ まとめ
胸式呼吸は「胸郭を広げて肺を膨らませる呼吸」。
浅い呼吸になりやすく、肩首の負担と緊張が増える。
ただし、瞬発的パフォーマンスや集中が必要なときには有効。
普段は腹式×横隔膜が健康にベスト、状況で使い分けることが重要。








