バルデナフィルの禁忌 心血管系障害を有するなど性行為が不適当と考えられる患者
この禁忌は、バルデナフィルそのものの毒性ではなく「性行為という行為を許可してよい心臓状態かどうか」を問う、ED薬特有で非常に本質的な項目です。以下、添付文書の文言が意味している範囲・背景・実臨床での判断基準まで踏み込んで解説します。
① 添付文書のこの禁忌文の正確な意味
心血管系障害を有するなど、性行為が不適当と考えられる患者
とは:
ED薬を使う/使わない以前に、そもそも性行為自体が生命リスクになる心血管状態の患者を指します。
つまり「薬が危険」なのではなく「性行為+薬の組み合わせが危険」という位置づけです。
② なぜED薬で「性行為の可否」を問うのか
性行為は循環器的に見ると
- 心拍数上昇
- 血圧上昇
- 心筋酸素消費量増加
3–5 METsの運動負荷
(=早歩き~階段昇降程度)
問題になるのは
- 心血管系に予備能がない
- わずかな負荷で虚血・不整脈・心不全を起こす
こうした状態です。
③ 具体的に「該当する患者」とは誰か
① 明確に禁忌に該当する状態(代表例)
以下はいずれも
「性行為そのものが危険」 と判断されます。
● 虚血性心疾患
- 不安定狭心症
- 安静時狭心症
- 発作頻発の労作狭心症
- 心筋梗塞発症後早期(目安:6か月以内)
● 心不全
- NYHAⅢ~Ⅳ度
- 急性心不全・増悪期
- 利尿・強心薬調整中
● 不整脈
- 持続性心室頻拍
- コントロール不良の心房細動
- 失神を伴う不整脈
● 血圧異常
- 重度高血圧(未治療・コントロール不良)
- 症候性低血圧
- 起立性低血圧が顕著な例
● その他
- 重度弁膜症(大動脈弁狭窄など)
- 最近の脳梗塞・TIA
- 肺高血圧症(重症)
④ なぜ「心血管系障害を有する」だけでは足りないのか
心疾患があっても:
- 安定狭心症でコントロール良好
- 軽症心不全(NYHAⅠ–Ⅱ)
- 高血圧が良好に管理されている
性行為可能な患者も多い
そのため添付文書では
「性行為が不適当と考えられる」
という表現になっています。
⑤ 実臨床での判断基準(重要)
循環器領域では
「この人は何METsまで耐えられるか」
で判断します。
目安
- 4–5 METs以上可能
- 階段2階分を止まらず上がれる
- 早歩きで10分可能
原則、性行為は許容
- 3 METs未満
- 歩行で息切れ
- 日常動作で胸痛
性行為は不適当
⑥ なぜ禁忌に「幅」があるのか
この項目は:
- 検査値で一律に切れない
- 症状・安定性・治療状況で変わる
- 時間経過で可→不可、不可→可に変わる
医師の総合判断が前提
⑦ 患者説明としての正しい伝え方
誤解されやすい説明:
「心臓が悪いからED薬は使えません」
正しい説明:
「今の心臓の状態では、性行為そのものが体に負担になります。まず心臓を安定させましょう。」
⑧ 一文でまとめると
この禁忌の本質は:
ED治療は「性行為の安全確認」を含む医療行為であり、心血管的に性行為が危険な患者には、薬の問題以前に“行為自体”を許可してはならない
という意味です。








