ザガーロの禁忌で重度の肝機能障害のある患者とは
添付文書(および海外の製剤情報)に基づき、「重度の肝機能障害のある患者に対する禁忌(理由・根拠)」「肝障害がある場合に起こり得る薬物動態の変化」「臨床での実務的対応(処方・モニタリング)」を分かりやすく整理して説明します。
要点(先に結論)
- ザガーロ(デュタステリド)は主に肝臓で代謝される薬剤であるため、重度の肝機能障害がある患者では血中濃度が上昇するおそれがあり、そのため“禁忌”になっている。軽度〜中等度の肝障害についてはデータが限られているため慎重投与とされ、重度は投与しない。
1) 「なぜ肝機能障害で血中濃度が上がるのか?」(薬理・薬物動態の視点)
- 代謝の低下:デュタステリドは主に肝臓(CYP3A4を含む経路)で代謝されます。肝機能が著しく低下すると代謝能が低下し、クリアランス(体から薬を除く速度)が落ちる → 血中濃度(AUC)が上昇しやすい。
- 長い半減期の影響:デュタステリドは半減期が長く(製剤情報では数週間レベルとされる)ため、代謝低下時には体内蓄積が起こりやすく、濃度上昇とそれに伴う副作用リスクが増大する可能性がある。
- 臨床試験での扱い:肝障害患者での薬物動態は十分に研究されていない(多くのラベルで「肝障害での薬物動態は検討されていない」と記載)。従って、重度肝障害での安全域が確認されていない点も禁忌根拠の一つ。
2) どのような臨床的リスクが増えるのか?
- 有害事象の増加リスク:血中濃度が高くなると薬理作用(および薬剤に伴う有害事象)が増す可能性があり、実際に製造販売後報告で肝機能障害や黄疸の重篤事例が報告されているため注意が必要とされています。
- 肝酵素上昇・黄疸:臨床試験や市販後報告でAST/ALT上昇や黄疸が報告されており、肝障害がある患者ではこれらが悪化するリスクが高くなる懸念があります。
3) 添付文書は何と書いてあるか(要点抜粋)
- 禁忌:重度の肝機能障害のある患者に投与しない。理由として「本剤は主に肝臓で代謝されるため、血中濃度が上昇するおそれがある」と明記されています。
- 慎重投与:重度を除く肝機能障害の患者では薬物動態が検討されておらず、慎重投与とする旨の記載があります(必要に応じて効果と安全性を定期確認)。
4) 処方・フォローのチェックリスト
以下は一般的な臨床上の考え方・実務的な指針であり、個別の患者対応は担当医の判断を優先してください。
- 重度肝機能障害(禁忌)
- 添付文書に従い、重度肝障害がある患者には投与しない(例:臨床的に明らかな肝不全、著しい黄疸、肝酵素の高度上昇など)。(重度の定義は添付文書に明確な数値表記がない場合があるので、臨床的判断またはChild-Pugh分類で“C”相当を重度と考えることが多いが、ラベルが明記している基準がない場合は慎重に扱う。)
- 肝機能障害(軽度〜中等度)の患者
- 薬物動態の検討が限られているため慎重投与。処方前に肝機能(AST、ALT、総ビリルビン、ALPなど)のベースライン測定を行うことを検討。
- フォロー(投与中)
- 投与開始後は定期的に肝機能検査を行う(例えば初期数か月に一度、その後は臨床状況に応じて)。肝酵素の上昇や黄疸が出たら速やかに中止し、原因検索と適切な処置を行う。市販後には肝機能障害の報告があるため早期発見が重要。
- 他剤との相互作用に注意
- デュタステリドは主にCYP3A4で代謝されるため、強いCYP3A4阻害薬(例:ケトコナゾール、イトラコナゾール、クラリスロマイシンなど)を併用すると濃度が上がる可能性がある。肝障害によりさらに代謝が低下するとリスク増加。併用薬の見直しも重要。
- 患者説明
- 肝疾患既往のある患者にはリスクを説明し、肝症状(倦怠感、食欲不振、黄疸、濃い尿、かゆみなど)が出たら直ちに受診するよう指導する。
5) 臨床データの限界(エビデンス面での注意)
- 多くのラベルは「肝機能障害時の薬物動態は十分に検討されていない」と明記しており、重度肝障害でのデータ欠如がそのまま禁忌や慎重投与の根拠になっています。つまり「安全に使えることが示されていない」こと自体が重大な判断材料です。
まとめ(要点再掲)
- デュタステリドは主に肝代謝されるため、重度肝機能障害では代謝低下→血中濃度上昇→副作用や肝毒性リスク増加が懸念される。したがって添付文書で重度肝機能障害は禁忌となっています。軽度〜中等度でもデータ不足のため慎重投与・定期的モニタリングが推奨されます。
参考(主要出典)
- ザガーロ添付文書(PMDA)。禁忌・肝機能障害に関する記載。
- FDA製品ラベル(Avodart/dutasteride):肝障害時の薬物動態の未検討など。
- StatPearls(Dutasteride):肝代謝と肝障害時の注意点の概説。
- PMDAの安全性評価資料(市販後報告に基づく肝障害リスクの評価)。

