アメリカ合衆国で使用されるトラウマの分類

アメリカ合衆国で使用されるトラウマの分類は、主に精神医学や心理学の専門的な枠組みで定義されています。特に、DSM-5（精神障害の診断と統計マニュアル 第5版）やICD-10（国際疾病分類第10版）に基づく分類がよく使われます。以下はアメリカで広く使用されるトラウマの分類方法です：

1. 心的外傷後ストレス障害（PTSD）

• PTSDは、特にトラウマ体験に基づく精神的な健康問題としてよく認識されています。DSM-5におけるPTSDは、過去に強烈な恐怖や無力感を伴う出来事を経験した後に生じる症状として定義されています。これには、次のような種類があります：
  • 直接的な経験によるPTSD：被害者としてトラウマを体験した場合。
  • 目撃者によるPTSD：他者が受けたトラウマ的な出来事を目撃した場合。
  • 二次的なトラウマ（vicarious trauma）：支援者や医療従事者がトラウマ的な出来事に関連した情報を繰り返し扱うことで影響を受ける場合。

2. 急性ストレス障害（ASD）

• 急性ストレス障害は、PTSDの前段階として位置づけられることがあります。重大なストレスやショックを受けた直後に発症し、症状は1か月以内に現れることが特徴です。ASDは、PTSDと似た症状を示すものの、症状の持続期間が短いため、診断基準が異なります。

3. 複雑性PTSD（C-PTSD）

• 複雑性PTSDは、通常のPTSDに加えて、長期間にわたる虐待や家庭内暴力、戦争などから生じるトラウマに関連します。これには感情の調整の困難、自己評価の低下、対人関係の問題、過度の怒りや罪悪感などの症状が伴うことが特徴です。この分類は、特に子ども時代に受けた虐待や人道的な危機において見られます。

4. 解離性障害

• 解離性障害は、トラウマに関連する症状の一部として現れることがあります。解離性障害の種類には以下が含まれます：
  • 解離性健忘：重大な出来事や情報を記憶できない状態。
  • 解離性同一性障害（多重人格障害）：自己のアイデンティティが断片的になり、複数の人格が交互に現れる障害。
  • 解離性フラッシュバック：過去のトラウマ的出来事を突然、強烈に再体験する現象。

5. 生理的トラウマ

• アメリカの一部の心理学者や精神科医は、トラウマを生理的な反応に基づいても分類しています。生理的トラウマとは、ストレスによって体が異常な反応を示し、身体的な健康問題を引き起こす状態です。これには、心拍数の増加や呼吸の乱れ、消化不良、免疫系の問題などが関わる場合があります。

6. 共感的トラウマ（Empathic Trauma）

• 共感的トラウマは、他人の苦痛に対して強い共感を抱くことによって生じるトラウマ的な影響です。支援者やカウンセラーが患者の苦しみを強く感じることで、トラウマ的な反応を示すことがあります。

7. 社会的トラウマ（Social Trauma）

• 社会的トラウマは、社会的または文化的な差別、偏見、社会的不公平に起因するトラウマです。人種差別、ジェンダーに基づく不平等、LGBTQ+コミュニティへの差別などが含まれます。このような社会的圧力が長期間続くことで、精神的な健康に深刻な影響を与えることがあります。

8. 発達的トラウマ

• 子ども時代の体験が発達に大きな影響を与える場合を指します。これには、親の虐待、家庭の崩壊、ネグレクトなどが含まれます。発達的トラウマは、長期的に自己肯定感や対人関係、感情調整に影響を与えることがあります。

9. 人道的トラウマ

• 戦争や紛争、テロ、難民としての経験に関連するトラウマです。これには、戦争による暴力、戦闘体験、避難生活などが含まれます。

10. 親のトラウマ（Transgenerational Trauma）

• 親や祖父母などの世代が受けたトラウマが、次世代に引き継がれる現象です。これは、子どもが直接体験していなくても、親のトラウマ体験が家庭環境に影響を与え、子どもにも精神的な影響を与えることがあります。

アメリカでは、これらのトラウマの理解と診断が進んでおり、治療法や支援方法も多様化しています。心理学的な支援やカウンセリング、認知行動療法、EMDR（眼球運動による脱感作と再処理法）などがトラウマ治療に使われています。

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新宿ウエストクリニック院長

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