バルデナフィルの禁忌 重度の肝障害のある患者

この禁忌は「肝臓で代謝される薬を、代謝できない状態の人に使うと何が起きるか」を理解すると腑に落ちます。バルデナフィルの薬物動態・肝機能評価・実臨床での線引きまで含めて解説します。


① 禁忌文の正確な意味(結論)

重度の肝障害があり、バルデナフィルを正常に代謝・排泄できない患者には、血中濃度が過度に上昇し、重篤な副作用リスクが高まるため投与してはならない

という意味です。


② なぜ肝障害が問題になるのか

バルデナフィルの代謝

  • 主に 肝臓で代謝
  • 代謝酵素:CYP3A4(主)
  • 代謝後に胆汁・尿へ排泄

肝機能=薬の処理能力


肝障害があると

  • 代謝速度低下
  • 半減期延長
  • 血中濃度↑↑

通常量でも「過量投与状態」になる


③ 「重度の肝障害」とは具体的に何か

添付文書上の実質的基準

  • Child–Pugh分類 C
  • またはそれに相当する状態

Child–Pugh分類(要点)

項目 評価
総ビリルビン 上昇
アルブミン 低下
PT/INR 延長
腹水 難治性
肝性脳症 あり

C(10–15点)=重度


代表的な該当患者

  • 非代償性肝硬変
  • 難治性腹水
  • 肝性脳症を繰り返す
  • 食道静脈瘤出血既往
  • 明らかな黄疸

④ なぜ「慎重投与」ではなく「禁忌」なのか

理由は3つあります。

① 安全な用量設定ができない

  • 個体差が極端
  • 血中濃度予測不能

② 副作用が重篤化しやすい

  • 低血圧
  • 失神
  • 不整脈
  • 視覚障害

③ 代替手段がある

  • 他のED治療
  • 原疾患安定化が優先

使わない選択が最も安全


⑤ 軽度・中等度肝障害はどう扱うか

軽度~中等度(Child–Pugh A–B)

  • 禁忌ではない
  • ただし:
    • 低用量開始
    • 慎重投与
    • 併用薬確認(CYP3A4阻害)

例:注意が必要な併用薬

  • マクロライド系抗菌薬
  • アゾール系抗真菌薬
  • 一部の抗HIV薬

肝障害+代謝阻害=危険


⑥ なぜ肝障害患者は「血圧リスク」も高いのか

  • 末梢血管拡張が元々ある
  • 循環血漿量低下
  • 自律神経不安定

ED薬で一気に低血圧


⑦ 実臨床での確認ポイント

医療者が見るべき点:

  • 肝硬変の有無
  • Child–Pugh分類
  • 黄疸・腹水・脳症
  • 併用薬(CYP3A4阻害)

⑧ 患者説明としての正しい伝え方

誤解を生む説明:

「肝臓が悪いとED薬は使えません」

正しい説明:

「肝臓の働きがかなり落ちている状態では、薬が体に溜まりすぎて危険になるため、今は使えません。」


⑨ 一文でまとめると

この禁忌の本質は:

肝臓が薬を処理できない重度肝障害の状態で、血管拡張薬を投与すると、用量調整ではカバーできない重篤な副作用が起き得るため、絶対に使うな

という意味です。