ハミルトン・ノーウッド分類
うす毛に気付くタイミング
髪の毛がうすくなってきたことにどんなことで気付くでしょうか。髪をかき上げたらおでこが広がった気がする、鏡に映る頭のてっぺんを見て肌色が多いのに驚いた、ドライヤーで髪の毛を乾かすときに手応えを前より感じなくなった、お風呂の排水口に髪の毛がすぐ詰まる、などいろいろなタイミングがあります。
うす毛の進行いろいろ
これらのきっかけ、つまりうす毛の進み方は人によって違いがあります。これらの違いをまとめた指標は「ハミルトン・ノーウッド分類」と呼ばれます。AGA(男性型脱毛症)の部位や進行具合による分類で、AGAの症状をみる際の代表的な基準となっています。
また、ハミルトン・ノーウッド分類はもともと欧米人の症状を基にしているため、現在日本ではこのハミルトン・ノーウッド分類に加え、日本人含むアジア人のうす毛の進行の特徴(つむじ周辺から始まることが多い)も含めた「高島分類」をAGA診察に用いることがあります。※女性の薄毛ではルートヴィッヒ分類(準備中)が多く使われています。
特にうす毛になりやすい部分
AGA(男性脱毛症)はいったん発症すれば進行を続け、自然治癒しません。一部の男性は一定の年齢に達すると、血中の男性ホルモンが5α還元酵素によりジヒドロテストステロン(DHT)と呼ばれる物質が発生します。このDHTが毛髪の成長を妨げます。DHTは男性ホルモン受容体と呼ばれる部位で作用します。男性ホルモン受容体は、頭頂部や前頭部の毛乳頭細胞に多くあることから、AGAによる脱毛症状はこれらの部分に集中して起こります。
AGA治療薬の作用機序
プロペシア(フィナステリド)、ザガーロ(デュタステリド)は、DHT を生む5α還元酵素のはたらきを抑える薬です。この作用でAGAの原因物質であるジヒドロテストステロン(DHT)の発生が抑えられるため、結果的にAGAの症状が改善します。
ハミルトン・ノーウッド分類とは?
これら脱毛症状の部位と進行度をもとにして、AGAの症状を分類したものをハミルトン・ノーウッド分類といい、AGA治療における重要な指標の1つになっています。ハミルトン・ノーウッド分類によれば、うす毛の箇所によって3つ、うす毛の進行状況によっても分けられます。
うす毛の箇所による基準
うす毛が進行すると場所によって見た目に特徴が現れます。毛のうすくなった箇所がそれぞれアルファベットの形に似ているため、M字型・O字型・U字型と呼ぶことがあります。
O字型:頭頂部から
頭を上から見たときにアルファベットのO字のように頭頂部から脱毛は始まります。鏡でも自分では見えにくいことから、他人に指摘されて気付くことが多いです。このため気が付いた時には既に症状が進んでいたという場合もあります。
M字型:額の左右(そりこみ)部分から
額の左右から生え際が徐々に後退してゆきます。前髪を上げたときにアルファベットのMの字をしているのが特徴です。顔の全面にあたるため、早くから気づくことが多いですが、前髪を普段からたらす髪型をしている場合は気付きが遅れることがあります。
U字型:額全体から
額の左右を含め生え際が全体的に後退してゆきます。このパターンは同時にO字型も併発する(2方向からうす毛がすすむ)ことが多いため、より早期の治療開始が推奨されます。
うす毛の進行による基準
O字、M字、U字型を描くように症状が始まるAGAは、時間が経つにつれうす毛の範囲が広がり、最終的には頭の側面・うなじ部分だけに毛髪が残る状態になります。このうす毛の範囲の、部位と進行を分類したものが下の図です。
O 頭頂部から | M 生え際から | U 前頭部から |
日本人で多い「O字型」 | 比較的進行の早い「U字型」 | |
「O字型」「M字型」の併発 | ||
「U字型」「M字型」の併発 | ||
頭頂部と前頭部がつながりつつある | ||
頭頂部と前頭部がつながってしまった |
日本人に多く見られるAGA症状
AGAからくるうす毛は上の図のようにパターンがあり、これからの対処法を決める上で、自分がどれにあたるを確認することは重要です。「ハミルトン・ノーウッド分類」で分ける型のうち、日本人に多いとされるのが頭頂部からうす毛が進行する「Ⅱvertex型」です。頭頂部から始まり、追って生え際も後退する特徴があります。
日本人で多いAGAの進行型 vertex(頭頂部)型 |
↓ |
うす毛のパターン別対処
M字・O字・U字のタイプは、場所は異なっても原因は同じAGAの症状ですので、治療に用いる薬は基本的には変わりません。このうち、O字型から始まるうす毛について、O字にあたる頭頂部は血管の数が比較的少なく、血流が悪くなり髪に栄養が届きにくい状態にあります。そのため、この部分には頭皮の血行を改善する外用薬ミノキシジルの併用がよりすすめられます。※内用薬ミノキシジルは日本国内では承認されていません。
内服薬
プロペシア | ||
最も長く使われている、AGA治療として世界初の内服薬です。 | ||
フィナステリド | ||
プロペシアのジェネリック薬。効果は先発薬と基本的に同じ。 |
ザガーロ | ||
プロペシアに続く、次世代のAGA治療です。 | ||
デュタステリド | ||
ザガーロのジェネリック薬。効果は先発薬と基本的に同じ。 |
外用薬
ミノキシジル外用薬 | ||
頭皮の血行とそれに伴う発毛を促進。特にO字型のうす毛に有効。 | ||
塩化カルプロニウム液 | ||
頭皮の血行を促進。長く使用されている外用薬。 |
ほかに適度な運動や、充分な睡眠の確保など生活習慣の改善も、AGAの進行に抑えるためには需要です。これもAGA治療薬の使用と同時に意識して行うことが望ましいのは言うまでもありません。
うす毛に気付いたら?
AGAは進行性ですので、治療なしでうす毛が回復することはありません。いっぽう数日間で急激に脱毛するわけでもないということもあり、見た目の変化に気付くまでにしばらく時間がかかります。(特にうす毛が頭頂部から始まるO字型の場合は、自分で頭頂部を見ることが出来ないため、気づいた時は症状が進行していたことが多くあります)。
AGAは特に頭頂部と前頭部の状態を気にすることで、発症に気付きやすくなります。AGAの始まりと進行をチェックするためにも、いつもの洗髪の際に毛量や髪の毛が細くなっていないかなど、常に気に掛けることが大事です。また、AGAの発症や進行に気が付いたら、早めの治療を始めることをすすめます。
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新宿ウエストクリニック院長
安心の医師略歴・著書、メディア履歴臨床経験豊富な当院医師の論文
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