薬剤性EDとは?

薬剤性ED

薬剤性ED(薬剤性勃起不全)とは、特定の薬物や薬剤が勃起不全(ED)の原因となる状態を指します。特定の薬物や薬剤が性的機能に影響を及ぼし、勃起に問題を引き起こすことがあります。薬剤性EDは、一時的なものから長期的なものまでさまざまな程度があります。

■薬剤性EDのメカニズム

薬剤によってEDが生じるメカニズムは複数あります:

①血管系への作用

陰茎の血流低下が主要原因
例:β遮断薬、サイアザイド系利尿薬
→血管拡張や収縮性に影響し、勃起に必要な血流が不足

②神経系への作用

神経伝達物質に影響
例:抗うつ薬(SSRI)、抗精神病薬
→セロトニンやドパミンのバランス変化で性欲・勃起反応抑制

③ホルモン系の抑制

性ホルモン低下
例:5α還元酵素阻害薬(デュタステリド、フィナステリド)
→DHT低下、テストステロン変動により性機能低下

④血管内皮・NO系の阻害

NO(ニトリックオキシド)阻害
例:特定の抗高血圧薬
→勃起のシグナル伝達が弱くなる

⑤精神作用による二次的影響

精神安定剤、睡眠薬など
→覚醒レベル低下、性欲低下 →機能面でのED


■代表的な薬剤のカテゴリーとEDリスク

臨床研究や副作用情報で、EDリスクが比較的多く報告される薬剤群:

●循環器系

  • β遮断薬(プロプラノロール等)

  • サイアザイド系利尿薬

  • スピロノラクトン

  • ACE阻害薬(稀)

●精神・神経系

  • SSRI系抗うつ薬(パロキセチン、フルボキサミン等)

  • SNRI、三環系抗うつ薬

  • 抗精神病薬

  • 抗不安薬、睡眠薬

●泌尿器関連

  • フィナステリド、デュタステリド
    (性欲低下・射精障害が併発することも)

●その他

  • H2ブロッカー(シメチジン)

  • 一部抗てんかん薬

  • 化学療法薬

  • オピオイド

※必ずしもすべての人に起こるわけではありません。
頻度・重症度は薬剤、投与期間、個人差に強く依存します。


■薬剤性EDの特徴

●特徴1:発症時期が明確

新しい薬の開始後、数日〜数週間で発症するケースが多い

●特徴2:中止または変更で改善可能

薬剤の調整により可逆的であることが多い
例:

  • β遮断薬 → 代替薬へ変更

  • SSRI → SNRIやNaSSAへの変更

  • 5α還元酵素阻害薬 →中止3ヶ月で改善

●特徴3:心理的影響が併発しやすい

EDが生じることで自信低下 → 二次性の心因性ED
結果、混合型の様相を呈することも


■薬剤性EDの診断プロセス

診断の基本は 薬歴のチェック時間関係の検討

  1. EDの発症時期と薬剤開始時期の照合

  2. 併用薬、増量、有害作用歴の確認

  3. 基礎疾患(高血圧、糖尿病等)によるEDとの鑑別

  4. 薬剤調整の試験的実行(可能な範囲で)


■治療戦略

●1. 薬剤調整(最優先)

  • 減量

  • 薬剤変更(スイッチ)

  • 投与タイミング調整

※医師管理下でのみ実施

●2. PDE5阻害薬の併用

●3. 生活習慣改善

  • 禁煙、節酒、運動
    →血流改善

●4. 心理サポート

  • 自信低下による二次的心理要因にも対応


■臨床で注意すべきポイント

●EDを「病気」ではなく「副作用」と捉える

原因薬が明確なら、根本治療は薬剤調整
PDE5阻害薬のみで対応すると、原因が放置される

●患者にとって非常に言い出しにくい副作用

特に精神科・循環器科では、患者が医師に言わずに悩み続けるケースが多い
医療者側の積極的な聞き取りが重要


■薬剤性EDは増えている?

高血圧、うつ病、前立腺肥大、糖尿病などの治療薬の普及により、薬剤性EDは現代臨床で重要性が増加しています。

多剤併用(ポリファーマシー)高齢男性で特に多く、独立分類として扱う意義が高まっています。


■まとめ

  • 原因薬剤を特定し、調整することで改善可能なケースが多い
  • 血管、神経、ホルモン、NO系など複数のメカニズムで発生

  • PDE5阻害薬は有効だが、根本治療は「薬剤の見直し」

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